酸・塩基

【酸と塩基の定義1(アレーニウスの定義)】
 


1)酸の例として塩酸HCl(塩化水素HClの水溶液),塩基の例として水酸化ナトリウムNaOH。それぞれの電離。

   塩酸       〔 HCl → H Cl      

水酸化ナトリウム 〔 NaOH → Na + OH 

 

2)酢酸CH3COOHの電離

酢酸は,塩酸(強酸)などに比べると弱い酸(弱酸)である。強酸とは,水溶液中で完全に電離する酸で,多くのHを出すが,弱酸は電離しても元に戻る性質があり,結果的にその一部だけが電離する酸でHは少ししか出ない。強酸の電離は完全(一方的)なので「→」で示すが,弱酸の電離を示すときは,「?」で示す。酸塩基の強弱は後で詳しく説明する。

 

    CH3COOH ⇄ CH3COO H 

 

3)硫酸H2SO4の電離

 硫酸は電離してH2つ出すことができるが,2つのHの電離のしやすさが異なるため,次のように段階的にHを放出する。

   一段目 〔 H2SO4 → HSO4 H  (HSO4- 硫酸水素イオン)

二段目  HSO4 ⇄ SO42 H 

 

 この二段階の電離をまとめて示すことがよくある。

         H2SO4 → 2H SO42 

 

4)アンモニアNH3水の電離

 アンモニアは分子内にOHをもたないが,水に溶け次のように電離してOHを出す。

  〔 NH3 + H2O ⇄ NH4 + OH 〕

 

厳密にはHClなどの酸から出た水素イオンH+は,水溶液中で水H2Oと結合し,オキソニウムイオンH3Oとして存在する。塩酸の電離を厳密に書くと次のようになる。

          HCl + H2O → H3O + Cl (電離を表すときはH2Oを省略して書く

 

例題

次の酸,塩基が完全に電離するとして,電離を表す反応式を書け。ただし,多段階で電離するものは,一つにまとめた式で書け。

1HNO3  (2H3PO4  (3H2S  (4KOH  (5Ca(OH)2

 

(1) HNO3 → H NO3  (2) H3PO4 → 3H PO43

(3) H2S → 2H S2  (4) KOH → K OH  (5) Ca(OH)2 → Ca2 2OH

 

【酸と塩基の定義2(ブレンステッド・ローリーの定義)】

アレーニウスの定義は水溶液中での話である。そこでブレンステッドとローリーは水溶液以外でも適用できるように,次のように酸・塩基を定義した。

 
 

例題

次の反応式の各物質またはイオンを,ブレンステッド・ローリーの定義によって酸・塩基に分類せよ。

(1) HCl + NH3 NH4 + Cl  (2) CH3COOH + H2O  ⇄ CH3COO + H3O

 

(1) HCl=酸,NH3=塩基 

(2) CH3COOH=酸,H2O=塩基,CH3COO=塩基,H3O+=酸(?のときは逆反応も考えるので,右側の物質の考える)

 

【酸と塩基の価数】

1分子の酸が放出することができる水素イオンHの個数を酸の価数という。また,1分子の塩基が放出することのできる水酸化物イオンOHの個数,あるいは1分子の塩基が受け取ることのできる水素イオンの個数を塩基の価数という。 

 
 

酸性酸化物と塩基性酸化物】 

 CO2SO2といった〔 非金属 〕の酸化物は,水に溶けると一部がH2Oと反応して,H2CO3(炭酸)やH2SO3(亜硫酸)になる。また,これらの物質は塩基とも反応する。このような酸のはたらきをする酸化物を〔 酸性酸化物 〕という。

 Na2OCaOといった〔 金属 〕の酸化物は,水に溶けるとH2Oと反応して,NaOHCa(OH)2になる。また,これらの物質は酸とも反応する。このように塩基のはたらきをする酸化物を〔 塩基性酸化物 〕という。

 また,アルミニウムAl,亜鉛Zn,スズSn,鉛Pbなど一部の金属の酸化物は,酸とも塩基とも反応するので〔 両性酸化物 〕という。

 

【酸と塩基の電離度による分類】

電離度

 酸・塩基は,電離してHOHを放出するが,それぞれの酸・塩基で電離する度合いが異なる。例えば,HClは水溶液中でほぼすべてのHCl分子が電離しているが,CH3COOHは水溶液中では一部のCH3COOH分子しか電離していない。塩基も同様で,完全に電離するものと一部しか電離しないものがある。 水溶液中の酸・塩基の電離している割合を〔 電離度 〕といいαで表す。

 

酸・塩基の強弱

より多くのHを出す酸,より多くのOHを出す塩基は,それぞれ酸としてのはたらき,塩基としてのはたらきが強いので,〔 強酸 〕,〔 強塩基 〕とよばれる。これを電離度αで考えると次のようになる。

 

・強酸,強塩基 ⇒ 電離度は,ほぼ1(完全に電離している)。

 ・弱酸,弱塩基 ⇒ 電離度は1よりもかなり小さい(一部しか電離していない)

 

強酸 :塩酸〔 HCl 〕などハロゲンの水素化物,硝酸〔 HNO3 〕,硫酸〔 H2SO4 〕

 強塩基:〔 NaOH 〕,〔 KOH 〕などアルカリ金属の水酸化物,

〔 Ca(OH)2 〕,〔 Ba(OH)2 〕などのアルカリ土類金属の水酸化物

弱酸・弱塩基は,それ以外の酸・塩基とする。